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NATIONAL COLLEGE OF NURSING JAPAN

高齢者ケアのエキスパート看護師が語る、患者さんとのエピソードと看護の魅力

高齢者ケアのエキスパート看護師が語る、患者さんとのエピソードと看護の魅力

卒業生

国立長寿医療研究センター 勤務

Q. 卒業後どのような仕事をされていましたか。

私は、国立長寿医療研究センターで、集中治療室に7〜8年、地域包括ケア病棟に1年、回復期リハビリ病棟に2〜3年、内科病棟に2年勤務していました。

今は呼吸器内科と循環器内科の病棟で副師長として働いています。人工呼吸器をつけている患者さんが多いですね。また、高齢の方が多いので、食べられない人も多くいらっしゃいます。

Q. 看護師として大事にしていることを教えてください。

何よりも患者さんを尊重し、誠意を持って接することを大切にしています。

認知症の患者さんとは、コミュニケーションがうまくとれないこともあります。そのため、中にはくだけすぎた言葉遣いをする方も見受けられます。医療者としての適切な距離感を保ちながら、患者さんに寄り添える言葉かけを心がけています。「言葉かけが優しくて良かった」と言っていただけると、本当に嬉しいですね。

一人ひとりの個性や価値観を大切にする姿勢は、認知症ケアの根幹を成すものだと思います。

Q. 印象に残っている患者さんとのエピソードを教えてください。

地域包括ケア病棟に異動した時に担当した80代女性の患者さんのことが印象に残っています。

介助が多く必要な方で、ご家族は自宅に連れて帰りたいという強い希望を持たれていました。でも、自宅に帰っても、誤嚥してしまい再入院になるということを繰り返していて、根本的な対策が必要な状況でした。

そこでご家族に病棟に来ていただいて、カンファレンスを重ねることにしました。ケアマネジャーさんや訪問看護の方も交えて、再入院しなくてすむような自宅での生活について一緒に考えました。

退院後は私も訪問に伺わせていただき、以前よりも元気に過ごせていることをみて安心しました。自宅で過ごすのは無理だとあきらめずにみんなで協力できたことがよかったと思います。

Q. 副師長としての仕事内容と、やりがいを教えてください。

副師長の仕事は大変ですが、責任のある仕事だと感じています。

スタッフの教育や業務の改善など、自分で進められる自由さがあるのが魅力ですね。私は30歳前から副師長を務めており、もう10年ほどになります。この役職を通して、経験をたくさん積むことができました。

やりがいを感じるのは、スタッフの成長を見られることですね。副師長として新人教育に携わる中で、最初は分からないことだらけだったスタッフが、2〜3年目になると成長してくれるのを見るのは嬉しいですね。

毎日話し合いを重ねながら、一緒に成長していく過程は、私自身の糧にもなっています。

Q. 国立看護大学校時代の思い出について教えてください。

実習は大変でしたが、とても身になる経験でした。特にタイでの実習は印象深いですね。現地の男性看護師と、お互いにつたない英語でしたが、一体感を感じながら頑張りました。

また今になって思えば、せっかく有名な先生がたくさんいらっしゃったので、授業をもっと真剣に聞いておけばよかったと思います。

Q. 男性看護師として働くことについてどう感じますか。

男性看護師はまだまだ少数派なので、女性の多い職場に溶け込むのは大変なこともあります。

特に新人の頃は壁を感じることもあると思います。でも、男性看護師同士の結束は強いですね。

男性看護師がもっと増えて、性別に関係なく、お互いの考えを尊重し合える環境にしたいですね。

Q. 国立長寿医療研究センターの特色を教えてください。

国立長寿医療センターでは、新人看護師の教育カリキュラムがしっかりしていると思います。

副師長の中には教育担当を長く経験されている方が多く、新人教育プログラムは特に念入りに計画されています。自分もその中で勉強させてもらっています。

また、他のナショナルセンターと比べて、業務に悩殺される感じが少なく、厳しいところは厳しいながらも、1人前になるまでじっくり成長できるところも魅力だと思います。

 

当センターでは、認知症ケアにも力を入れています。

認知症の方が多い病棟では、きちんとマンパワーを確保し、患者さんが安心して過ごせる環境づくりに努めています。特に認知症の方への接し方については、院内の研修で学ぶ機会を設けています。

認知症に特化した病棟もあり、対応に優れた看護師は、患者さんの認知症が悪化しないような関わりがすごく上手です。そのような先輩の具体的な声かけの仕方や、目線の合わせ方など、認知症の方と良い関係性を築くためのコツを共有しています。

Q. 看護師を目指す人にメッセージをお願いします。

認知症ケアは、これからますます重要性が高まっていくと感じています。

AIが発達しても、人と人との関わりは決して置き換えられません。

いつか身近な人の介護が必要になったときにも、あなたの知識と経験が役立つはずです。不安を抱えずに介護に向き合える、それは看護師という仕事の大きな強みだと思います。

みなさんが看護師になって、一緒に働ける日を楽しみにしています。